2025-26年秋冬シーズンが、ファーの華々しいカムバックを合図しているのだとすれば、ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)によるコレクションは、その復活の一端を担っている。ジャカード織のスカートとなめらかなパンツの上から羽織られたロングコートはチンチラ、ルーズな黒いバイカージャケットはフィッシャーの毛皮だろうか。グレーのマントは、ミンクファーからできているように見え、ショー後半に登場したミリタリー調のシルバーのロングコートと黒いショートコートは、アストラカン毛皮だとしても不思議ではない。しかし2016年以降、ジョルジオ アルマーニは多くのラグジュアリー・メゾンのように、基本的に食品業界の副産物であるシアリングのみをファーの代用品として使用している。当初に比べるとその加工技術は進歩し、それによってデザイナーは現代にそぐうエシカルな物づくりを実践しながら、ニューヨークのファッションシーンでとりわけ高まっている、ファーの需要に応えることができるようになった。そしてアルマーニもまた、進化したその技術をあらゆる形で駆使している。
駅の待合室を思わせる空間や半円状に並べられた長椅子など、今回のショーは、昨年10月にニューヨークで行われたショーを彷彿とさせた。そしてその時と同じように、展開されたルックの数々が、ゲストたちをメゾンの旅路へと誘った。
コレクションの真髄は、ルック74と75に凝縮されているように思う。スリムなロングドレスのそれらには複雑な模様が装飾されており、まるで地形図だ。上に重ねられている、シアーなチュールのマントにあしらわれたビジューが、その地形を輝く天蓋のように覆う。物事を俯瞰してデザインされたかのようなコレクションは、多様な文化圏から影響を受けていながらも決して模倣的ではなく、唯一無二の視点から生み出される調和が存在する、アルマーニらしいコレクションだ。
長年、その調和を体現してきたのが、テーラーリングだ。構造やシルエット、ディテールに特色づけられた今回のテーラードルックは、あらゆる文化のスタイルを優雅に織り交ぜており、アースカラーや鉱石の輝きを想起させるカラーパレット、多彩なパターンの生地、無数のグレージュ、アクセントのつばなし帽で、東洋や南方の国々を思わせる空気感が表現された。メンズコレクションで再解釈した美学を、ウィメンズウェアでさらに再確認しているアルマーニの旅は、これからも続く。
※ジョルジオ アルマーニ 2025-26年秋冬コレクションをすべて見る。
Text: Luke Leitch Adaptation: Anzu Kawano
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